進歩性~本件発明と主引例の課題の共通性⑥

 

平成27年(行ケ)10120【モータ駆動双方向弁】<高部>

 

*本件発明と引用例は対応する構成の作用効果が異なるとして、設計事項でないとした

 

*引用発明の構成は、役割を果たしているとして、構成を追加する動機付けを否定した

 

Cf.H27(行ケ)10114

 

(判旨抜粋)

本件発明における薄板パイプ38及びシール材(Oリング39)と引用発明のシール体zとでは,ガス(高圧蒸気)の隔離,シール作用(気密の確保),電気絶縁に係る作用効果が各々相違しているというべきであり,相違点1に係る本件発明の構成が,設計事項であるということもできない。

また、引用発明におけるシール体zは,弾力性ある部材であり,それ自体でシール構造を成すとともに,ステータxとロータyとを隔てる役割をも果たしていることから,さらにOリング等のシール材を用いる必然性は全くなく,さらに薄板パイプを設ける必然性も認められないから,引用発明において,薄板パイプ及びOリング等のシール材を採用する動機付けがない。また,引用例には,これらを採用する記載も示唆もない。仮にシール体zをロータyとステータxとの間を隔離する部材であるとみなしたとしても,シール体zにOリング等のシール材を嵌装すれば,Oリング等のシール材を介してシール体zに外力が加わることとなり,この外力により弾力性あるシール体zが変形してロータと接触したり,あるいは気密性が失われたりするおそれがあるため,そのような構成を採用することには阻害要因があるというべきである。       http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/678/085678_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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