知財高判平成30年(行ケ)10150「手袋に対するテクスチャード加工表面被覆および製造方法」事件<高部裁判長>
※発明の課題と実施可能要件(及び進歩性)…
⇒従来技術より高い作用効果を奏する(という課題を解決できる)ように実施可能である必要は無い。
⇒進歩性の問題。⇒発明の公開の程度の問題ではない。
<参考>
H27(行ケ)10150は、物の発明において物の「生産」「使用」の両方について、実施可能要件を判断した。
<判旨抜粋>
…物を生産する方法の発明についての実施とは,その方法を使用する行為及びその方法により生産した物を使用等する行為をいう(同法2条3項3号)から,物を生産する方法について上記実施可能要件を充足するためには,明細書の発明の詳細な説明において,当業者が,発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく,その方法を使用し,かつ,その方法により生産した物を使用できる程度の記載があることを要し,また,その程度の記載のあることをもって足りるものと解される。…
本件各発明の方法により製造される手袋が,原告の引用する手袋(甲1,甲2及び甲7)よりも優れたグリップ力を有するか否か,及び,つまみ力試験でグリップ力の測定ができるか否かは,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしているか否かとは関係がない。…原告の主張は,本件各発明が,甲1,甲2及び甲7等の従来技術よりも手袋のグリップ力を向上させることを課題とするにもかかわらず,その課題の達成が追試可能な形で示されていないという趣旨のものと理解できないわけではない。しかし,そうであれば,結局のところ,本件各発明の上記従来技術に対する進歩性を問題とするものであり,発明の公開の程度を問題とするものではないから,いずれにせよ実施可能要件の充足を争う主張としては失当というほかない。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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