東京地裁平成28年(ワ)35978<嶋末>【営業秘密使用差止等請求事件】

ブイ・テクノロジーv.ウシオ電機

 

*特許権侵害訴訟で、不正取得が介在する営業秘密を証拠として提出すると、不競法2条1項8号違反となりうる。

⇒本件は「重過失」が否定された。

 

《別件特許権侵害訴訟は和解終了》

 

(判旨抜粋)

本件文書1は,原告製品の製品概要,仕様等が記載された16丁の書面であり,また,本件文書2は,表紙はなく,原告製品の露光に関する内容…が記載された4丁の書面であって,いずれも原告が中国企業に対して原告製品を販売する目的で台湾の代理店及び中国企業に提供したものと認められる。また,その内容も,被告が自社の製品に取り入れるなどした場合に原告に深刻な不利益を生じさせるようなものであるとは認められない。そして,被告は,原告の競合企業であり,同様の営業活動を行っていたものであるから,被告が営業活動の中で原告が営業している製品の情報を得ることは当然に考えられるのであり,その一環として,本件各文書を取得することは不自然とはいえず,被告が通常の営業活動の中で取得することは十分に考えられるものである(なお,原告は,競合他社の情報について開示を受けること自体が異常事態であり,競争者が少ない光配向装置メーカーの業界で は殊更異常と認識すべきであるとも主張するが,競争者が少ないからこそ,他社の製品に関する情報に接する機会が多いという側面も考えられるのであるから,原告の上記主張は,直ちには採用することができない。)。また,原告と被告が競業関係にあるとしても,原告が取引先との間で本件各文書に関する秘密保持契約を締結したか否か,本件各文書に記載された内容が取引先の守秘義務の対象に含まれるか否かについて,被告が直ちに認識できたとは認められないし,本件各文書のConfidentialの記載をもって,直ちに契約上の守秘義務の対象文書であることが示されているものともいえない。…

したがって,被告が本件各文書を取得した時点で,守秘義務違反による不正開示行為であること又は不正開示行為が介在したことを疑うべき状況にあったと認めることはできず,被告に不競法2条1項8号所定の重大な過失は認められない。

 

 

https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3253

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/983/086983_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)