東京地判平成24年(ワ)15612【疲労特性に優れたCu-Ni-Si系合金部材】<高野>

 

 

*下限値なし

⇒0個も含み充足であるが、実施可能違反

 

「被告製品の直径4μm以上の大きさの介在物個数は0個/m㎡であり,これは86個/m㎡以下の範囲内であるから,被告製品は,構成要件F…を充足する。」

 

(判旨抜粋)

溶解時の溶湯内での反応により生じる酸化物,硫化物等については,本件明細書の発明の詳細な説明に,直径4μm以上の介在物個数を低減させる方法の開示は全くない。…原告が本件特許出願時において直径4μm以上の全ての介在物個数を0個/m㎡とするCu-Ni-Si系合金部材を製造することができたと認めるに足りず,技術的な説明がなくても,当業者が出願時の技術常識に基づいてその物を製造できたと認めることもできない。そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明には,特許請求の範囲に記載された数値範囲全体についての実施例の開示がなく,かつ,実施例のない部分について実施可能であることが理解できる程度の技術的な説明もないものといわざるを得ない。したがって,本件発明は,特許請求の範囲で,粗大な介在物が存在しないものも含めて特定しながら,明細書の発明の詳細の説明では,粗大な介在物の個数が最小で25個/m㎡である発明例を記載するのみで0個/m㎡の発明例を記載せず,かつ,全ての粗大な介在物の個数を低減する方法について記載されていないことなどからすれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明の少なくとも一部につき,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/561/084561_hanrei.pdf

 

https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3011

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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