東京地判平成13年(ワ)27381 〔インサート器具事件〕
*特許権者の他の出願明細書 (本件特許出願後に出願した実用新案) を参酌して、限定解釈した事例 ⇒後願が引用していた
Cf.同一出願人の後願明細書の記載を 参酌しなかった例
・東京地判H14(ワ)9503
・東京地判H11(ワ)17601
(〔インサート器具事件〕の判旨抜粋)
…原告が本件特許出願後に出願した実用新案(以下「別件実用新案」という。)は,本件発明における問題点を解決したものである。すなわち,別件実用新案明細書には,「出願人は,たとえば第7図に示すような形状をしたセラミック製のインサート本体を提案した(特願昭60-282465号「インサート器具」参照)。」,「ところが,このような構成のインサート本体2では,インサート本体2の外周面のテーパがほぼ一直線状に形成されているために,インサート本体2の天面2bとテーパ面2a上部との間の付近におけるインサート本体2自身の肉厚Dがインサート本体2の外周縁に向って薄くなる結果,コンクリート内でインサート本体2に引抜力を作用させると,インサート本体2の天面の外周縁近傍が貝がら状に割れる可能性が高いといった問題点があった。」,「かかる目的を達成するため,この考案は,構造物内に埋設されるインサート本体と,このインサート本体に一端部が挿入されて,・・・・・かつ,前記本体部は,その外周面に外径が本体部の下端に向かうに従い縮小するテーパ状の受け面を有し,しかも,この受け面は全体的に外側に膨出する形態の球面状をなして」いる。この別件実用新案明細書の記載からすると,本件発明の「テーパ」が側面が直線である場合に限定されることは明らかである。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/606/011606_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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