損害論⑥

 

大阪地判平成29年(ワ)7576【基礎パッキン用スペーサ】<杉浦>

 

*102-2の「利益」は消費税相当分も含む

*102-3の「相当実施料率を乗じる対象となる売上額」は消費税別

 

「受領した損害賠償金のうちその実質が資産の譲渡等の対価に当たると認められる部分は課税対象になる」

 

(判旨抜粋)

特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり,売上高に消費税を加算すべきかについては,次のとおり,これを加算して算定するのが相当である。消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるところ(消費税法4条1項),「例えば,次に掲げる損害賠償金のように,その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。…(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」(消費税法基本通達5-2-5)とされていることに鑑みると,特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金を侵害者から受領した場合,その損害賠償金も消費税の課税対象となるものと推察される。そうすると,特許権者が特許権侵害による損害のてん補を受けるためには,課税されるであろう消費税額相当分についても損害として受領し得る必要があるというべきである。そして,被告は,被告第1製品を販売するに当たり,その販売先から別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」の「売上高」欄記載の売上額だけでなく,それに対する消費税相当額の支払も受けたものと推認される。したがって,特許法102条2項の「利益の額」は,消費税込の売上額をもとに算定すべきである。

これに対し,被告は消費税を加算すべきでないと主張する。しかし,原告は,被告から消費税相当額を加算した額の損害賠償を受けたとしても,前述のとおり,受領した損害賠償金のうちその実質が資産の譲渡等の対価に当たると認められる部分は課税対象になることなどに照らせば,不当に過大な利益を受けることにはならない。その他被告がるる指摘する事情を考慮しても,この点に関する被告の主張は採用できない。…

原告及び被告いずれも,特許法102条3項に基づき損害額を算定する場合の本件第2及び第3特許の相当実施料率を4%程度とし,これを不合理ないし不相当と見るべき事情もないことから,相当実施料率は4%と認められるところ,相当実施料率を乗じる対象となる売上額を消費税込の金額とすべき証拠はない。

 

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/022/089022_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)