平成31年(行ケ)10006、10058【気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用】<鶴岡>

 

 

*客観的な性質は、実質的な相違点でない

⇒他の相違点も容易想到であり、進歩性×

 

「未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティが約1パーセント未満」は,モメタゾンフロエートの水性懸濁液を含有する薬剤を鼻腔内に投与した場合に現れる客観的な性質

⇒進歩性×

 

(判旨抜粋)

本件優先日当時,モメタゾンフロエートは極めて強い局所抗炎症作用を示す一方,副作用は弱く,主作用と副作用の乖離が大きい局所活性ステロイドであることが技術常識として知られていたから…鼻腔内に投与される他の局所活性ステロイドについて200~440μg/日といったオーダーの用量が用いられているといった情報を参考にしつつ,モメタゾンフロエートの1日当たりの用量としてそれより低い100~200マイクログラムを選択することは,当業者が容易に想到し得た…。…

絶対的バイオアベイラビリティとは,血管内投与以外の投与経路(例えば鼻腔内投与)で得られる血漿中濃度曲線下面積と静脈注射時の血漿中濃度曲線下面積とを比較することにより得られる割合…であるから,投与した薬物の量や濃度には依存しないものといえる。そうすると,「未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティが約1パーセント未満」は,モメタゾンフロエートの水性懸濁液を含有する薬剤を鼻腔内に投与した場合に現れる客観的な性質であって,甲1発明が備えた構成でもあると推認でき,これを否定する証拠もない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/119/089119_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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