平成31年(ネ)10015【エクオール含有大豆胚軸発酵物】<大鷹>

 

限定解釈⇒非充足

 

=原審・平成29(ワ) 35663

 

本件明細書…発酵原料として「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」とを明確に区別した上で,…「大豆胚軸抽出物」は,発酵原料に適さないことの開示がある。

「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しない。

 

 

 

(判旨抜粋)

 

【請求項1】 オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物。

 

…本件明細書には,「大豆胚軸抽出物」に関し,「…大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが高いという欠点がある。また,大豆胚軸抽出物は,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のため に別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある。このような理由から,大豆胚軸抽出物は,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用できないのが現状である。」(【0007】),「大豆胚軸」に関し,「大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため, それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆の胚軸の多くは廃棄されているのが現状である。また,大豆胚軸には,大豆の子葉部分と同様に,アレルゲン物質が含まれているため,大豆アレルギーを持つ人にとって,大豆胚軸を摂取乃至投与することができなかった。」(【0008】),「本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を原料としており,資源の有効利用という点でも産業上の利用価値が高い。」(【0014】)との記載があり,本件明細書では,「大豆胚軸発酵物」の発酵原料としての「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」自体とを明確に区別している。 そして,これらの記載から,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」は,エクオールを工業的に製造する上で問題があり,「本発明」の「大豆胚軸抽出物」の発酵原料に適していないことを理解できる。

…本件明細書では,「大豆胚軸発酵物」の発酵原料として「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」とを明確に区別した上で,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」は,発酵原料に適さないことの開示があることに照らすと,かかる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しないものと解するのが相当である…。

 

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/569/089569_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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