平成30年(行ケ)10145<大鷹>【海生生物の付着防止方法】

 

*主引用例に阻害要因に繋がる推論的記載があったが、「一重項酸素による付着抑制効果の有無及びその程度を実証的なデータ等により確認したものではない。」として、阻害要因を認定しなかった。

⇒動機付けあり

⇒進歩性×

 

(判旨抜粋)

…当業者は,過酸化水素と有効塩素剤とを組み合わせて使用する甲1発明には,有効塩素剤の添加により有害なトリハロメタンが生成するという課題があることを認識し,この課題を解決するとともに,使用する薬剤の濃度を実質的に低下せしめることを目的として,甲1発明における有効塩素剤を,トリハロメタンを生成せず,有効塩素発生剤である次亜塩素酸ナトリウムよりも少量で付着抑制効果を備える海生生物の付着防止剤である甲2記載の二酸化塩素に置換することを試みる動機付けがある…。…

これに対し被告らは,…甲1記載の有効塩素発生剤は,過酸化水素との酸化還元反応によって一重項酸素を発生させる化合物であるから,甲1発明における有効塩素発生剤を,過酸化水素と反応しても一重項酸素を発生しない二酸化塩素に置換する動機付けはない…から…当業者においては,過酸化水素に二酸化塩素を組み合わせることについての動機付けがなく,むしろ阻害要因がある旨主張する。しかしながら,…甲1には…一重項酸素の発生により「相乗的に抑制効果が高まるものと考えられる。」と推論しているに過ぎず,一重項酸素による付着抑制効果の有無及びその程度を実証的なデータ等により確認したものではない。また,甲1には,過酸化水素と有効塩素発生剤との併用以外にも,過酸化水素とヒドラジンとを併用した「実施例3」として,過酸化水素とヒドラジンとの併用の結果,過酸化水素と有効塩素発生剤との併用の結果と同様の抑制効果が得られたことの記載があり…,過酸化水素とヒドラジンとの併用によって一重項酸素が発生することは想定できないことに照らすと,二酸化塩素が過酸化水素との併用により一重項酸素を発生しないとしても,そのことから直ちに甲1発明における有効塩素発生剤を二酸化塩素に置換する動機付けを否定することはできない。

 

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/826/088826_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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