平成29年(行ケ)10174【遊戯装置】(コーエイv.カプコン)<鶴岡>

 

*主引用発明に、①副引用発明における一部の構成を組み合わせる論理と、②同文献等から導かれる周知技術を組み合わせる論理付けは異なる無効理由。

⇒②のみを主張した場合に審決が①を判断しなくても遺漏なし。

 

*(原審と異なり、)「除くクレーム」で進歩性が認められた‼

⇒実質的に構成の相違であるから、特殊な判断ではない。

 

*方法発明の間接侵害(101条4号)は、他の物と組み合わせることにより方法発明を使用する物も含む、また当該「他の物」を現に保有していなくても、間接侵害成立

 

<TIP>一太郎事件では、一太郎をインストールしたPCが、方法発明に直接使用される物であり、CD-ROMは「間接の間接」侵害品であった。本件では、イ号製品である「第2の記憶媒体」がゲーム装置に装填され、方法発明に直接使用される「物」であるから、「間接の間接」ではない。⇒イ号製品が方法を“直接”使用するように、クレームを作成すべき!

 

 

(判旨抜粋)

「【請求項1】ゲームプログラムおよび/またはデータを記憶するとともに所定のゲーム装置の作動中に入れ換え可能な記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)を上記ゲーム装置に装填してゲームシステムを作動させる方法であって,…」

 

…「キャラクタ」,「プレイ実績」の情報をセーブできない記憶媒体を採用すると,前作のゲームにおける「キャラクタ」,「プレイ実績」の情報が記憶媒体に記憶されないこととなり,「前作のゲームのキャラクタで,後作のゲームをプレイする」,「前作のキャラクタのレベルが16以上であると,後作において拡張ゲームプログラムを動作させる」という本件公知発明1を実現することができなくなることは明らかである。したがって,…本件公知発明1において,記憶媒体を,ゲームのキャラクタやプレイ実績をセーブできない「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更する動機付けはなく,そのような記憶媒体を採用することには,阻害要因がある。

 

原告は,本件審決が甲8発明に相違点1に係る構成が記載されていると認定しながら,公知発明(主引用発明)と甲8発明の組合せによる本件発明1及び8の容易想到性の有無を判断していない点において,判断遺漏の違法がある,と主張する。

しかしながら,主引用発明が同一であったとしても,主引用発明に組み合わせる技術が公知発明における一部の構成か,あるいは,周知技術であるかによって,通常,論理付けを含む発明の容易想到性の判断における具体的な論理構成が異なることとなるから,たとえ公知技術や周知技術認定の根拠となる文献が重複するとしても,上記二つの組合せは,それぞれ異なる無効理由を構成するものと解するのが相当である。

しかるところ,本件審判手続において,原告は…が「周知技術」であると主張し,その根拠の一つとして甲8発明の内容を主張立証するにとどまっており,更に進んで,動機付けを含む公知発明と甲8発明それ自体との組合せによる容易想到性については一切主張していない。そうすると,原告が本件訴訟において主張する無効理由(公知発明と甲8発明の組合せによる容易想到性)は,本件審判手続において主張した無効理由1-2(公知発明と甲8発明を含む周知技術Y1の組合せによる容易想到性)とは異なる別個独立の無効理由に当たるというべきである。したがって,本件審決が,公知発明と甲8発明との組合せによる容易想到性について判断していないとしても,本件審決の判断に遺漏があったとは認められない。

 

…被控訴人は,①本件発明A1の「第1の記憶媒体と…第2の記憶媒体とが準備されており」とは,実施行為者において各記憶媒体をゲーム装置に装填可能に準備することを意味するものであるところ,本編ディスクを保有せずにイ-9号製品等のみを保有しているユーザは,MIXJOYを選択することはないから,本件発明A1の方法を実施することがなく,かつ,イ-9号製品等には,単独でも十分楽しめる内容のゲームプログラムが備わっているから,イ-9号製品等は,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途を有するものであって,本件発明A1の方法の使用にのみ用いる物ではない,②本件発明A1を実施する物は,「本編ディスク及びアペンドディスクを装填したプレイステーションからなるゲームシステム」であり,イ-9号製品等は,イ-9号方法等を実施する装置の生産に用いられる物に過ぎないから,「その方法の使用に…用いる物」に該当しない旨主張する。

…まず,上記①の点について,…「第1の記憶媒体と…第2の記憶媒体とが準備されており」とは,ゲームソフトメーカ等により第1の記憶媒体及び第2の記憶媒体が提供され,ユーザにおいてこれを入手することが可能な状況を意味するものであって,ユーザにおいて各記憶媒体を現に保有することを意味するものではないと解される。…

…次に,上記②の点については,本件発明A1は,「記憶媒体…を上記ゲーム装置に装填してゲームシステムを作動させる方法」(構成要件A)であって,「上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装填される」(構成要件D)ことを発明特定事項とするものであるから,「上記第2の記憶媒体」に相当するイ-9号製品等は,「その方法の使用に…用いる物」に該当するといえる。また,特許法101条4号の「その方法の使用にのみ用いる物」は,当該「物」のみにより当該特許発明を実施するものである旨の限定は付されていないから,他の物と組み合わせることにより当該特許発明を実施する物も「物」に含まれると解される。

 

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/970/088970_hanrei.pdf

 

 

【特許★】「システム作動方法 」事件(カプコンv.コーエー)-方法発明の間接侵害(101条4号)は、他の物と組み合わせることにより方法発明を使用する物も含む。当該他の物を現に保有している必要なし。

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)