平成28年(行ケ)10087【物品の表面装飾構造】<高部>

 

*主引用発明との一致点相違点を、審決と異なる主張の可否

 

*当事者が同意すれば,審決と異なる引例同士の組合せも審理OK。

⇒その場合、審決と主/副引用例を入れ替えた取消判決の拘束力は、入れ替えた組合せにも及ぶ!!

 

「当事者双方が,本件審決で従たる引用例とされた引用発明2を主たる引用例とし,本件審決で主たる引用例とされた引用発明1又は3との組合せによる容易想到性について,本件訴訟において審理判断することを認め,特許庁における審理判断を経由することを望んでおらず,その点についての当事者の主張立証が尽くされている本件においては,原告の前記主張について審理判断することは,紛争の一回的解決の観点からも,許される…。」

 

Cf.平成29年(行ケ)10174【遊戯装置(コーエイv.カプコン)】<鶴岡>

 

(判旨抜粋)

…引用例2を主たる引用例とする主張の可否について

特許無効審判の審決に対する取消訴訟においては,審判で審理判断されなかった公知事実を主張することは許されない(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁)。しかし,審判において審理された公知事実に関する限り,審判の対象とされた発明との一致点・相違点について審決と異なる主張をすること,あるいは,複数の公知事実が審理判断されてる場合にあっては,その組合せにつき審決と異なる主張をすることは,それだけで直ちに審判で審理判断された公知事実との対比の枠を超えるということはできないから,取消訴訟においてこれらを主張することが常に許されないとすることはできない。…

当事者双方が,本件審決で従たる引用例とされた引用発明2を主たる引用例とし,本件審決で主たる引用例とされた引用発明1又は3との組合せによる容易想到性について,本件訴訟において審理判断することを認め,特許庁における審理判断を経由することを望んでおらず,その点についての当事者の主張立証が尽くされている本件においては,原告の前記主張について審理判断することは,紛争の一回的解決の観点からも,許されると解するのが相当である。

なお,本判決が原告の前記主張について判断した結果,請求不成立審決が確定する場合は,特許法167条により,当事者である原告において,再度引用発明2を主たる引用例とし,引用発明1又は3を組み合わせることにより容易に想到することができた旨の新たな無効審判請求をすることは,許されないことになるし,本件審決が取り消される場合は,再開された審判においてその拘束力が及ぶことになる。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/435/086435_hanrei.pdf

 

【特許★★】「導電性材料の製造方法」事件-①“除くクレーム”で進歩性が認められた事例、②訂正×の無効審決の取消訴訟において訂正〇・訂正後の発明は容易想到でないと判断した前訴の拘束力は、容易想到性の判断に及ぶとした事例。

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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