無効の抗弁の立証責任は、要件毎に異なります。

(無効理由、拒絶理由も同じ)

 

例えば、記載要件(サポート要件、実施可能要件、明確性要件)は、完全に権利者に立証責任があるので、記載要件違反であることを主張すれば、後は、権利者が立証できなければ無効。

 

ただ、冒認は特別な扱いです。

 

 

 

平成27年(行ケ)10230【噴出ノズル管の製造方法】<鶴岡> *冒認の立証責任

 

*冒認出願~特許権者が主張立証すべき程度

⇒一部認容

 

*H27(行ケ)10252同旨。

⇒原告の主張立証不足~被告が発明者という認定に必要な主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるとした。

 

「仮に無効審判請求人が冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付けとなる証拠を提出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるのに対し,無効審判請求人が冒認を裏付ける事情を具体的に指摘し,その裏付けとなる証拠を提出するような場合は,特許権者において,これを凌ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くされたと判断されることはない…。」

 

*H27(行ケ)10252同旨

 

(判旨抜粋)

…冒認出願…を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願がその特許に係る発明の発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負担するものと解するのが相当である。もっとも,そのような解釈を採ることが,すべての事案において,特許権者が発明の経緯等を個別的,具体的,かつ詳細に主張立証しなければならないことを意味するものではない。むしろ,先に出願したという事実は,出願人が発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であるとの事実を推認させる上でそれなりに意味のある事実であることをも考え合わせると,特許権者の行うべき主張立証の内容,程度は,冒認出願を疑わせる具体的な事情の内容及び無効審判請求人の主張立証活動の内容,程度がどのようなものかによって左右されるものというべきである。すなわち,仮に無効審判請求人が冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付けとなる証拠を提出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるのに対し,無効審判請求人が冒認を裏付ける事情を具体的に指摘し,その裏付けとなる証拠を提出するような場合は,特許権者において,これを凌ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くされたと判断されることはないものと考えられる。…

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/479/086479_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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