進歩性判断における「付加」と「置換」

 

②主引例「A+C」、副引例「B」

⇒CをBに置換

の関連裁判例(2)

 

平成24年(行ケ)10328「臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋」<芝田>

 

引用発明が既に課題(ゴミを放置すると悪臭が出る)を解決している場合は、 置換し難い。

⇒本件発明と主引例との課題の相違を理由として進歩性〇

 

=H22(行ケ)10351は同一特許出願の判決

Cf.H26(行ケ)10071

Cf.H27(行ケ)10114

 

《本件発明と主引例との課題の相違を理由として進歩性有りとした裁判例》

平成20年(行ケ)第10130号「レーダ」、平成20年(行ケ)第10096号「回路用接続部材」、平成21年(行ケ)第10361号「耐油汚れの評価方法」、平成23年(行ケ)10018「うっ血性心不全の治療へのカルバゾール化合物の利用」、平成24年(行ケ)第10262号「ガラス溶融物を形成する方法」、平成24年(行ケ)第10278号「換気扇フィルター及びその製造方法」、平成25年(行ケ)第10242号「照明装置」、平成28年(行ケ)第10079号「タイヤ」

《本件発明と主引例との課題が相違しているが、進歩性無しとした裁判例》

平成21年(行ケ)第10123号「ベルト伝動装置」、平成23年(行ケ)第10298号「マルチレイヤー記録担体」

 

 

(判旨抜粋)

被告は,引用発明は,厨芥,すなわち,腐敗しやすく悪臭を発生することが想定されるごみを収容するごみ袋であり,腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在すると主張する。

しかし,上記のとおり,引用発明は,厨芥等を真空輸送に適した状態で収容するためのごみ袋であり,厨芥等を長期間放置しておくと腐敗して悪臭を生じるという問題点は,上記真空輸送により解決されるものと理解することができ,引用例1の「厨房内などに水切り設備を設置して事前に水切りを行えるなどの場合は,本ごみ袋の下部に水切り用孔6を穿設してもよく,この場合はより一層効果的にごみの水分を取り除くことができる」(…)との記載からしても,引用発明が厨芥等から発生する腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在していると解することはできない。

以上のとおり,引用発明には,腐敗に伴う不快な臭気を中和するという課題がなく,引用発明に臭気中和組成物を組み合わせる動機付けもないので,本願発明と引用発明との相違点について,引用発明において,効果的な量の臭気中和組成物を吸収材上に被着して相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは,引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとした本件審決の判断には誤りがある。

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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