大阪地判平成30年(ワ)4901「通信端末装置」事件<谷>
*2つの相違点につき設計上の微差として実質同一とした。(特許法29条の2)
(請求項2及び3は非充足。⇒請求棄却)
…
(判旨要約)
①画像を,電話番号と対応付けられたメモリ番号に対応付けて記憶させるか,直接,電話番号と対応付けて記憶させるかは,設計上の微差
②様々な表示を行っている…任意に設定することが可能…設計上の微差
(判旨抜粋)
…①本件発明においては,画像をメモリ番号に対応付けているが,乙12発明においては,画像を電話番号に対応付けている点(相違点①),②本件発明1においては,新たに入手・記憶された第2画像が優先的に表示されるが,乙12発明においては,新たに入手・記憶された画像が優先的に表示されるか否か不明である点(相違点②),という相違点が存するとも考えられるため,これらの相違点が設計上の微差にすぎないか,実質的な相違点であるかについて,以下検討する。
<相違点①について>本件特許1の出願当時,携帯電話やハンドフリー電話の分野においては,携帯電話等の端末において,特定の電話番号をメモリ番号に対応付けて記憶させることは,複数の名前や電話番号を含む情報を整理するなどの目的に広く使われる,周知の技術であったことが認められる…。そうすると,画像を,ある電話番号と対応付けられたメモリ番号に対応付けて記憶させるか,それとも,直接,当該電話番号と対応付けて記憶させるかという違いは,設計上の微差にすぎない…。
<相違点②について>…乙12-1発明は,複数の画像を一つの電話番号に 対応付ける機能部を有しており,これを使用して,当該電話番号の着呼に応じて,複数の画像から一つの画像を選択しており,かかる選択を,着呼毎に変更したり,時間に応じて変更したり,一回の着呼に対して複数の画像を順番に変更したりすることにより,様々な表示を行っているものと認められる。したがって,乙12-1発明において,電話番号と対応する複数の画像からどの画像を選択するかということは任意に設定することが可能であり,複数の画像のうち,新たに入手した画像を優先的に選択することや,上記機能部において,これまで記憶されていた複数の画像のうち,表示しない画像と当該電話番号との対応付けを削除するか否かということは,必要に応じて,当業者が適宜選択し得る設計的事項である。…よって,乙12-1発明において,複数の画像のうち,新たに入手した画像を選択して表示し,これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応付けを削除せずに,これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応関係を維持することは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえ,奏せられる効果に 著しい差も認められない。…設計上の微差にすぎない…。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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