大阪地判平成26年(ワ)2468<高松>【パン切断装置】

 

公然実施発明の課題を、本件発明および主引用発明と共通すると認定し,副引例と組み合わせる動機付けを認めた。

⇒進歩性×

 

「公然実施発明…エンドレス刃物の高さ方向の位置を所望の位置に規制する技術的意義を有している」

 

(判旨抜粋)

…乙7発明の押さえローラは,鋸刃の上下位置をガイドアームの下端より刃先部分のみ突出するように規制する機能を有するが,この技術的意義は,帯鋸刃がガイドローラによって倒伏姿勢から垂直姿勢に矯正されることから,帯鋸刃に対して,倒伏姿勢に戻ろうとする力と垂直姿勢に矯正する力が働き,帯鋸刃の高さ方向の位置が所望の位置に安定しないため,帯鋸刃がガイドローラによって垂直姿勢に矯正された後に,帯鋸刃を上方から押さえることにより,鋸刃の高さ方向の位置を所望の位置に規制する点にあり,相違点1に係る本件特許発明の構成と同様の技術的意義を有すると認められる。

他方,公然実施発明においても,2つのプーリが傾斜して設けられているため,ローラユニットによって,プーリ間を結ぶエンドレス刃物のうち正面側を移動する部分の刃向きを略鉛直下方向きに規制しているところ,エンドレス刃物の上部を正面側及び背面側から挟んで支持する薄板状の刃物サヤが存することから,エンドレス刃物の高さ方向の位置を所望の位置に規制する必要がある。そうすると,公然実施発明においても,エンドレス刃物に対して,傾斜姿勢に戻ろうとする力と垂直姿勢に矯正する力が働くことから,エンドレス刃物の高さ方向の位置が刃物サヤに対する所望の位置に安定しないとの課題が乙7発明と同様に内在しており,公然実施発明における上部ローラは,エンドレス刃物を上方から押さえることにより,エンドレス刃物の高さ方向の位置を所望の位置に規制する技術的意義を有していると理解することができる。

このような公然実施発明と乙7発明の課題及び技術的意義の共通性からすると,公然実施発明に乙7発明を組み合わせる動機付けがある…。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/066/086066_hanrei.pdf

 

https://note.com/nkgk/n/n0da170122863

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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