大阪地判平成23年(ワ)6878【着色漆喰組成物の着色安定化方法】

 

*製造方法ではなく、単純方法と認定された⇒「実施」の範囲に影響がある。

Cf.H13(ワ)3764は、製造方法の発明とした

 

⇒単純方法の損害を販売額で計算した!!

⇒寄与率で調整した。

 

単純方法の損害論も、重要判決!!

 

 

(判旨抜粋)

 

【請求項1】 …を含有する着色漆喰組成物の着色安定化方法であって,当該着色漆喰組成物が水酸基を有するノニオン系の親水性高分子化合物を含有し,上記白色成分として石灰と無機の白色顔料を組み合わせて用いることを特徴とする方法。

 

本件特許発明1の構成要件A1には,「着色漆喰組成物の着色安定化方法」との記載はあるものの,その手順等が経時的に記載されているわけではない。しかし,「着色安定化方法」との文言の後には,「であって,」と繋がれた上で,「当該着色漆喰組成物が水酸基を有するノニオン系の親水性高分子化合物を含有し,」(構成要件B1)「上記白色成分として石灰と無機の白色顔料を組み合わせて用いる」(構成要件C1)「ことを特徴とする方法。」(構成要件D1)と説明されており,これら記載の全体に照らせば,本件特許発明1の「着色漆喰組成物の着色安定化方法」とは,当該着色漆喰組成物に構成要件B1記載の物質を含有させ,かつ,その「白色成分」を構成要件C1で特定されている物質の組み合わせとする方法を意味すると解するのが自然である。

しかも,本件明細書1において,本件特許発明1が解決しようとする課題の項に,従来の漆喰の現場調合の問題または漆喰の着色の問題を解決することを目的とし,具体的には,予め水や着色剤を配合して調整した漆喰塗材又は漆喰塗料を安定して供給するための方法を提供する旨記載されていることからしても,構成要件A1の内容である「石灰を含有する白色成分,無機の着色顔料,結合剤及び水を含有する着色漆喰組成物」について,「当該着色漆喰組成物が水酸基を有するノニオン系の親水性高分子化合物を含有し」(構成要件B1),「上記白色成分として石灰と無機の白色顔料を組み合わせ」(構成要件C1)るよう調整,調合する方法が,「着色漆喰組成物の着色安定化方法」として示されていると解される。したがって,構成要件A1を充足する着色漆喰組成物について,構成要件B1記載の物質を含有させ,かつ,構成要件A1中の「白色成分」を構成要件C1で特定されている物質の組み合わせとすることが,本件特許発明1の「着色漆喰組成物の着色安定化方法」に当たることになる。

被告は,被告製品1で酸化チタンを配合するのは,光触媒機能を得るためであって着色を安定させるためではないとして,前記構成要件A1の非充足を主張するが,…着色漆喰組成物の組成が上記各構成要件を客観的に充足するよう調整,調合すれば,着色安定化方法を使用したというべきであり,酸化チタンを配合する目的が光触媒機能を得ることにあったとしても,この結論を左右するものではない。

 

...

 

原告は,本件特許発明1は物を生産する方法の発明であり,被告製品1はその方法によって生産した物に当たるとして,その方法により物を生産することの差止めに加え,被告製品1の販売等の差止め及びその廃棄を請求している…。原告の主張は,本件特許発明1が,着色安定化された着色漆喰組成物を生産する方法であることを前提とするものであるが,特許法は,単純な方法の発明と物を生産する方法の発明とで権利を行使し得る範囲に差を設けており(同法2条3項,100条2項),そのいずれであるかの区別は明確でなければならない。本件特許発明1は,その特許請求の範囲の記載において,「着色漆喰組成物を生産する特定の方法」など,物を生産する方法であることを示す表現にはなっていない。また,本件明細書1の記載を参照しても,着色安定化方法によって,色飛び,色むらのない着色漆喰塗膜を形成することができるとされており,これによると,本件特許発明1の方法により生産した物とは,最終的に形成された漆喰塗膜であると解する余地があるのであり,着色漆喰組成物を生産する方法の発明であることが明確に示されているとはいえない。以上によれば,本件特許発明1については,物を生産する方法の発明ではなく,単純方法の発明と解するのが相当である…。

https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201701/jpaapatent201701_077-087.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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