効果のクレームアップ(権利者有利)②

 

平成17年(行ケ)10860【無鉛はんだ合金事件】

 

*Niを添加する課題が引用例と異なるとして「異質な効果」あり

Cf.東京地裁H18(ワ)6162

Cf.H20(行ケ)10484

 

 

(判旨抜粋)

【請求項1】…Cu0.3 ~ 0.7 重量%,Ni0.04 ~ 0.1重量%,残部Snからなる,金属間化合物の発生を抑制し,流動性が向上したことを特徴とする無鉛はんだ合金

 

甲1 明細書には,Sn-Ni-Cu の3 元素からなるPb フリーはんだが記載されており,Cu0.5 ~ 0.7%,Ni0.04~ 0.1%,残部Sn の範囲で,その組成が本件発明1と重複する。しかし,…本件発明1 の解決課題は,「はんだ付け作業中にCu 濃度が上昇した場合に,Sn とCu の不溶解性の金属間化合物が形成され,はんだ浴中に析出したり,ざらざらした泥状となってはんだ浴底に溜まったりして,はんだの流動性を阻害すること」であって,本件発明1 は,その解決課題をNi を添加することによって解決したものであり,そのような意味で,本件発明1 は「金属間化合物の発生を抑制し,流動性が向上した」ものである。

これに対し,…甲1 明細書発明においてNi を0.01重量%以上添加するのは,耐電極喰われ性を向上させるためであって,それ以外にNi を添加する理由は甲1 明細書には記載されておらず,甲1 明細書発明は,本件発明1 にいう「金属間化合物の発生を抑制し,流動性が向上した」ものではない。

したがって,この点において,本件発明1は甲1明細書発明と同一であるということができないから,本件発明1は甲1明細書発明と,「金属間化合物の発生を抑制し,流動性が向上した」点において同一でないとする審決の判断に誤りはない。

 

https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201002/jpaapatent201002_046-067.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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