効果のクレームアップ(権利者不利)❷

 

平成22年(行ケ)10055【血管老化抑制剤および老化防止抑制製剤】

 

*物のクレーム中の作用効果の記載は、特定事項でないから相違点でない

*引用例が本願発明と同一であり、選択発明の余地がなかった

 

引用発明及び本件補正発明は,いずれも物の発明であるところ,相違点3…「血管内膜を減少させる」ことは,発明の作用効果に関する事項であって,本件補正発明を物の観点から特定するものではない

 

(判旨抜粋)

【請求項】タラ目又はカレイ目の皮を原料とし,分解酵素としてペプシンを用い,pH1.5に調整した後,温度40℃で20分間酵素分解を行い得られた重量平均分子量が3,000の魚皮由来低分子コラーゲンを必須成分とする,血管内膜厚を減少させることを特徴とする血管老化抑制剤

 

引用発明及び本件補正発明は,いずれも物の発明であるところ,相違点3に係る本件補正発明の構成である「血管内膜を減少させる」ことは,発明の作用効果に関する事項であって,本件補正発明を物の観点から特定するものではない。したがって,「血管内膜を減少させる」との記載の有無は,物の発明である引用発明と本件補正発明との実質的な相違点とはいえない。

以上に対して,原告は,本件補正発明が「血管内膜を減少させる」こと,すなわち粥状動脈硬化症に対する予防及び治療という,引用発明が提供していない医薬用途を提供するものである旨を主張する。しかしながら,引用例が粥状動脈硬化症をも対象としていることは前記のとおりであるから,原告の上記主張は,「血管内膜を減少させる」ことが引用発明と本件補正発明との相違点たり得ないことを離れてみても,主張自体失当といわなければならない

 

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/013/081013_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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