効果のクレームアップ(権利者不利)❶

 

東京地裁平成16年(ワ)15892【樹脂】

 

*引用例が本願発明と同一であり、選択発明の余地がなかった

 

(判旨抜粋)

【請求項1】遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石を配合したことを特徴とする樹脂

 

本件発明は,天然の黒鉛珪石が常温で遠赤外線を放射するという機能を有することを利用したものであり,本件明細書には,他に黒鉛珪石に何らかの処理,加工等を施して遠赤外線放射機能を有するようにしたとの記載もない。したがって,本件発明における「遠赤外線放射機能」とは,単に天然の黒鉛珪石が有する属性であると解され,結果として「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石」とは,単なる「黒鉛珪石」を意味することになる。そうすると,本件発明の「遠赤外線放射機能を有する黒鉛珪石を配合したことを特徴とする樹脂」とは,種々の用途に用いられる樹脂一般に対して,黒鉛珪石を配合したものを意味する…。

引用例1には,遠赤外線放射機能を有するかどうかについては記載がない。しかし,…遠赤外線放射機能は,単に天然黒鉛珪石が有する属性であるから,本件発明の構成とはいえない。また,…天然の黒鉛珪石は,それ自体遠赤外線機能を有するものであることが認められ,引用例1に記載された黒鉛硅石も,遠赤外線放射機能を有するものであることは明らかである。したがって,引用例1にこの点の記載がなくても,本件発明は,引用例1に記載された発明であるということができる。

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/620/009620_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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