令和1年(行ケ)10137<大鷹> 〔セレコキシブ組成物〕
*パラメータに着目する動機付けなし ⇒進歩性〇
「甲1には…粉砕により微細化をした セレコキシブを用いることや,その 微細化条件を『セレコキシブのD90 粒子サイズ』で規定することについての 記載も示唆もない」
*別件令和2年(行ケ) 10110、10112、10155<大鷹>は、サポート要件×
(判旨抜粋)
【請求項1】・・・10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み,一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって,粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する製薬組成物。
本件明細書…の記載は,未調合のセレコキシブを粉砕し,「セレコキシブのD90粒子サイズ」を「約200μm以下」とした場合には,セレコキシブの生物学的利用能が改善されること,ピンミリングのような衝撃粉砕を用いることにより,他のタイプの粉砕と比較して,最終組成物に改善されたブレンド均一性がもたらせることを示したものといえる。しかるところ,甲1には,甲1発明の「セレコキシブを300mg含む経口投与用カプセル」にいう「セレコキシブ」について,その調製方法を示した記載はなく,また,粉砕により微細化をしたセレコキシブを用いることや,その微細化条件を「セレコキシブのD90粒子サイズ」で規定することについての記載も示唆もない。…
…甲9及び10には,特定の大きさよりも小さい粒子サイズの粒子が効果を奏する粉体の場合には,その粒度分布を,平均粒子径ではなく,「所望の大きさよりも小さい粒子サイズの粒子が粉末全体に占める割合」で特定することは,医薬品の原料粉末では一般的であることについての記載や示唆はなく,ましてや,セレコキシブの微細化条件として「セレコキシブのD90粒子サイズ」で規定することや,「セレコキシブのD90粒子サイズ」を「約200μm以下」とした場合には,セレコキシブの生物学的利用能が改善されることについての記載も示唆もない。他に特定の大きさよりも小さい粒子サイズの粒子が効果を奏する粉体の場合には,その粒度分布を,平均粒子径ではなく,「所望の大きさよりも小さい粒子サイズの粒子が粉末全体に占める割合」で特定することは,医薬品の原料粉末では一般的であることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,甲1に接した当業者において,甲1発明のセレコキシブを300mg含む経口投与用カプセルにおいて,経口吸収性(生物学的利用能)の改善及び薬効成分の含量均一性の改善のために,薬効成分のセレコキシブの粒子サイズを小さくすることに思い至ったとしても,セレコキシブの微細化条件として「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する」との構成(…)を採用することについての動機付けがあるものと認めることはできない…。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/809/089809_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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