令和1年(行ケ)10136〔パロノセトロン液状医薬製剤事件〕<鶴岡>
*サポート要件×
⇒クレームアップされた課題・効果も明細書に記載され、課題解決が認識できる必要あり
平成31年(ネ)10014〔PCSK9に対する抗原…〕と異なる
平成28年(行ケ)10189〔光学ガラス〕<鶴岡>に近い
【請求項1】 …少なくとも24ケ月の貯蔵安定性を有する溶液であって, 当該薬学的に許容される担体はマンニトールを含む,前記溶液
(判旨抜粋)
本件明細書には,24ケ月要件を備えたパロノセトロン製剤が記載されているとはいえないし,本件出願時の技術常識に照らしても,当業者が,本件各発明につき,医薬安定性が向上し,24ケ月以上の保存を可能にするパロノセトロン製剤とその製剤を安定化する許容される濃度範囲を提供するという本件各発明の課題…を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。…
原告は,本件においては,24ケ月要件を追加する補正が必要になることは予見できなかったものであり,その点を根拠付けるための記載が不十分であったことにはやむを得ない事情があるから…実験結果を追加することは許されるべきであるという趣旨の主張をする。しかしながら,そのような事情があるからといって,実験結果の後出しが許されることになるのかはそもそも疑問である。また,出願の過程で,様々な補正が必要になることは一般的に生じ得る事態であるところ,原告は,出願当初から,本件明細書に,本件各発明の課題は,医薬安定性が向上し,長期間の保存を可能にするパロノセトロン製剤とその製剤を安定化する許容される濃度範囲を提供することであると記載し…,かつ,パロノセトロンを用いる効果的かつ多用途の製剤は,室温で24ケ月を超える期間,保存安定的であると記載していた…のであるから,24ケ月要件を追加する補正が予想外の事態であったといえるかどうかにも問題があり,原告の主張には,その前提においても疑問がある。…
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/906/089906_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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