令和1年(ワ)30991【…テトラフルオロプロペンを含む組成物】<田中>

 

=控訴審・令和3年(ネ)10043<菅野>

 

*当初明細書で個別に記載されている特定の3種類の化合物の組み合わせが必然である根拠は記載無し

⇒補正要件×(新規事項追加)

=平成28年(行ケ)10257 【水晶発振器の製造方法】

=平成25年(行ケ)10346 【携帯情報通信装置】

 

※この考え方は、新規性・進歩性判断時の、引用発明の認定という場面でも同様であろう。(Cf.ピリミジン大合議判決)

 

「当初明細書においては,HFO-1234yf,HFO-1243zf,HFC-245cbは,それぞれ個別に記載されてはいるが,特定の3種類の化合物の組合せとして記載されているものではなく,当該特定の3種類の化合物の組合せが必然である根拠が記載されているものでもない。」

 

(判旨抜粋)

…請求項1及び2は,…補正(本件補正)により,本件特許請求の範囲は,「ゼロ重量パーセントを超え1重量パーセント未満の,HFO-1243zf及びHFC-245cbと,を含む,」という文言を有するものとなった。…

当初明細書においては,そもそもHFO-1234yfに対する「追加の化合物」として,多数列挙された化合物の中から特に,HFO-1243zfとHFC-245cbという特定の組合せを選択することは何ら記載されていない。この点,当初明細書においては,HFO-1234yf,HFO-1243zf,HFC-245cbは,それぞれ個別に記載されてはいるが,特定の3種類の化合物の組合せとして記載されているものではなく,当該特定の3種類の化合物の組合せが必然である根拠が記載されているものでもない。また,表6(実施例16)については,8種類の化合物及び「未知」の成分が記載されているが,そのうちの「245cb」と「1234yf」に着目する理由は,当初明細書には記載されていない。さらに,当初明細書には,特許出願当初の請求項1に列記されているように,表6に記載されていない化合物が多数記載されている。それにもかかわらず,その中から特にHFO-1243zfだけを選び出し,HFC-245cb及びHFO-1234yfと組み合わせて,3種類の化合物を組み合わせた構成とすることについては,当業者においてそのような構成を導き出す動機付けとなる記載が必要と考えられるところ,そのような記載は存するとは認められない(なお,本件特許につき,優先権主張がされた日から特許出願時までの間に,上記各説示と異なる趣旨の開示がされていたことを認めるに足りる証拠はない。)…

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/392/090392_hanrei.pdf

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/680/090680_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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