サポート要件~「複数の課題」問題

 

平成26年(行ケ)10016<清水>【マイクロ波利用のペプチド合成】

 

副次的な課題のサポート要件を緩やかに認めた!?

*サポート要件○⇒○

 

Cf.H24(行ケ)10076【ヒンダードフェノール性酸化防止剤組成物】

*重要でない課題は、解決可能に記載不要

 

本件明細書は…を特に重視して本件発明の解決すべき主要な課題に据え,「凝集」の点は,副次的な課題として位置付けている。

 

(判旨抜粋)

(ア)…本件明細書においては,「現在のSPPS技術に関しては2つの明確な欠点が存在する。」との記載があり,「2つの明確な欠点」につき,「第一は,所与のペプチドを合成するのに必要な時間の長さである。」…「現在の技術の別の問題は,ペプチド配列の凝集である。」と説明されている…。 (イ) 「必要な時間の長さ」について…「問題を解決するために」,従前も,様々な試みが行われてきたものの,結果の再現が容易ではない,高温により固相支持体及び反応混合物が変質する傾向があるなどといった問題があり,好ましい結果を得られなかった旨が述べられている。 (ウ) 他方,…「凝集」の問題に触れながらも,固相ペプチド合成に長時間を要する理由という,「必要な時間の長さ」に関する事項を説明している。…

(エ) 以上に鑑みると,本件明細書は,前記「2つの欠点」のうち,固相ペプチド合成の「必要な時間の長さ」の点を特に重視して本件発明の解決すべき主要な課題に据え,「凝集」の点は,副次的な課題として位置付けているとみるのが相当である。…

…当業者は,発明の詳細な説明の記載から,本件発明が,固相ペプチド合成の「必要な時間の長さ」という発明の課題を解決できることを認識し得る。…「凝集」の点については…当業者は,上記段落全体の記載から,本件発明において,カップリングへの悪影響に配慮しつつ,マイクロ波照射によって固相ペプチド合成の反応温度を高めれば,凝集が抑制されることを理解するものと認められる。以上によれば,当業者は,発明の詳細な説明の記載から,本件発明が,「凝集」という副次的な発明の課題を解決できることも認識し得るものであり,具体的な反応温度や加熱時間等が明示されていないことによって,サポート要件が直ちに否定されるわけではない。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/925/084925_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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