【譲渡の申出】全論点網羅

 

<論点整理>

①「譲渡の申出」行為は、日本国内である必要があるか?

 

②「譲渡」が外国であっても、「譲渡の申出」が成立するか?

※結局、“国内” 「譲渡」の意義が問題となる。

Cf.②´ (1)外国から日本国内への発送、(2)一般的規範

 

③「譲渡」が特許権存続期間満了後である場合

 

④その他

 

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①「譲渡の申出」行為は、日本国内である必要があるか?

 

平成22年(ネ)10001「モータ」⇒必要あり

 

米国CAFC(2010)Transocean v. Maersk

 

米国外で契約交渉・締結がされたが、米国内での履行を内容としており、実際に米国内で引渡しがされた場合には、「譲渡の申出」が米国外でも侵害成立?

 

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②「譲渡」が外国であっても、「譲渡の申出」が成立するか?

 

日本では裁判例なし

 

「譲渡」も日本国内である必要ありとする学説が有力(米国と同じ)

 

米国CAFC(2018年) TAOS v. Intersil

⇒「譲渡の申出」に相当し得る契約交渉が米国内でも、将来の販売予定地が米国内でなければ、非侵害。

 

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②´「譲渡」が外国から日本国内への発送

 

平成17年(行ケ)10817<佐藤>

⇒海外の事業者による日本国内の者への商品の直接販売・発送行為は、国内「譲渡」に該当しないと判断した(商標/不使用取消)

 

※裁判例及び令和3年改正商標法・意匠法に照らせば、②´は国内「譲渡」とは言えないか…

 

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②´´ “国内” 「譲渡」の意義について~一般的規範

 

「占有の移転」かつ「所有権の移転」?

 

製品は外国で、売買契約を国内で締結しても、“国内”譲渡不成立?

 

★国税庁~国外で購入した資産を国内に搬入することなく譲渡した場合には、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当しない

 

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③「譲渡」が特許権存続期間満了後である場合

⇒侵害成立

 

平成25年(ネ)10007「攪拌造粒装置」<設樂>

「本件特許権の存続期間中…の時点で…将来的な注文の打診…。…上記の譲渡の申出行為は本件特許権を侵害する行為である」

 

大阪地判平成28年(ワ)4815「油冷式スクリュ圧縮機」<杉浦>

 

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④その他

 

※「譲渡」者が他人であっても、「譲渡の申出」は成立する

 

※「譲渡」につき特許権者の許諾がある場合は、非侵害

 

東京地判平成20年(ワ)11245

「バリエーションが広いことを示して,被告ホームページの見栄えをよくするため…。…特許発明の実施品を譲渡した事実がなかった…」

 

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④ウェブサイトでの紹介

 

平成25年(ネ)10014

⇒HP上での紹介が該当しない。

⇒「譲渡の申出」を否定し、特許権者敗訴

 

★平成27年(ネ)10109<設樂>

⇒HP上での紹介が「譲渡の申出」に該当する規範

※上記事件の続き~特許権侵害をHP上に掲載した。~不競法/過失なしhttps://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/666/085666_hanrei.pdf

 

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譲渡の申出<まとめ>

 

①「譲渡の申出」行為は国内である必要があるか?

日本~必要あり

米国~必要なし

 

②「譲渡」が外国でも譲渡の申出」が成立するか?

日本~不成立

米国~不成立

 

「譲渡」=「占有の移転」かつ「所有権の移転」

 

③「譲渡」が特許権存続期間満了後を予定している場合 ⇒ 侵害成立

 

https://45978612-36b0-4db6-8b39-869f08e528db.filesusr.com/ugd/324a18_fa4cb619c3db4cecbb3f8ad00966e1f1.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)