全国人民代表大会常務委員会は、2019年4月23日に商標法の改正を公布しました。なお、改正後の中国商標法は、2019年11月1日に施行の予定です。今回の中国商標法の改正事項は、主に以下の2点になります。
①悪意の商標出願対策の強化
中国商標法第4条が改正されて、下線部の文言が追加されます。
(参考訳)中国商標法第4条
「自然人、法人又はその他の組織が、製造販売活動において、その商品又は役務について商標権を取得する必要がある場合には、商標局に商標の登録を出願しなければならない。使用を目的としない悪意による商標登録出願を拒絶する。この法律の商品商標に関する規定は役務商標にも適用する。
これにより、「使用を目的としない悪意による商標登録出願」は、拒絶理由・異議理由・無効理由の対象となります。追加条項は、冒認出願に対する明確な法的根拠となります。
また、これに伴い、中国商標法第19条第3項が改正されて、商標代理機構は依頼者の出願商標が「使用を目的としない悪意による商標登録出願」に該当することを知った、もしくは、知るべきである場合には、その委託を引き受けてはならない旨、追加されました。さらに、中国商標法第68条も改正され、事情によっては、このような悪意商標登録出願を代理した商標代理機構に行政処罰等を科す旨、規定されました。
②商標権侵害に対する損害賠償及び処罰の強化
中国商標法第63条が改正されて、権利者の損失額・侵害者の利益額もしくは使用許諾料を定めることが困難な場合の最高法定賠償額が300万元から500万元に引き上げられます。また、侵害の状況が深刻な場合に適用される懲罰的賠償の額が、権利者の損失額・侵害者の利益額もしくは使用許諾料で判断した金額の「一倍以上三倍以下」であったのが、「一倍以上五倍以下」になります。
また、権利者の要求に応じて、登録商標を盗用した偽造品の廃棄処分が命じられることとなり、偽造品から登録商標が除去されてもその偽造品が再び商業ルートに置かれることはなくなります。つまり、侵害品の廃棄・流通は、厳しく処分・制限されることとなります。